地域に生きる“みまさか”の若手たち
三浦 弘嗣さん =真庭市久世
地域に生きる“みまさか”の若手たち
三浦 弘嗣さん
=真庭市久世
愛される味追求したい
昨年3月に創業。勝山特産・富原茶の茶葉の香りを利かせたり、御前酒の蔵元・辻本店(勝山)の酒かすや、コーヒーを配合したりした定番に加え、蒜山産リンゴや北房産ピオーネなど、旬の果物を生かした期間限定版も精力的に手掛ける。
旭川の水を使い、副原料に県北の産物をブレンドするこだわりが受け、ファンの裾野を広げつつある。
三浦さんは山口大で発酵微生物について学び、2012年に中河内の実家へ帰郷。その年の夏から勝山のパン店「タルマーリー」に勤め、天然酵母を使ったパン作りやカフェ運営に当たった。
人生の巡り合わせとは不思議なもの。「タルマーリー」に2度勤務し、そこでビール職人としての技量を身に付けたのだ。
地ビール製造を計画していた同店から甲府市の醸造所へ研修に派遣された。原料の比率や、果物やハーブといった副原料のわずかな違いで味の種類が無限大に広がるところに魅了され、いったん同店を辞めた。
専門的な知識を深めるため、広島市の地ビール専門飲食店で働いていたが、15年秋、鳥取県智頭町に店舗を移した「タルマーリー」に請われて再就職。天然酵母を使った地ビールの製造担当として2年間、腕を磨いた。
「もっといろいろなビールに挑戦したい」。真庭市に住む妻との結婚も重なって創業を決意。旧給食調理場を活用して醸造所を構えた。
「新しいレシピを考え、仕込んでいるときが一番楽しい」
ただ、知名度不足から生産量が限られ、売り上げでは家計を賄えないのが実情。全国津々浦々、さまざまな醸造所が群雄割拠する中、いかに消費者にアピールしていくか。突き破らなければならない大きな壁がある。
「愛される味を追求し、信用とブランド力を高めなければ」と気を引き締める。
市内の人口は減少しており経営環境は厳しいものの、古里ならではのメリットも多いという。醸造所の物件を仲介してくれたのはNPO法人勝山・町並み委員会。タンクなどの設備類も実家の牧場などの協力で調達でき、初期投資を抑えることができた。
真庭の優れた発酵食品を売り出すために若手経営者らが立ち上げた「まにわ発酵’s」のメンバーでもある。飲食イベントへの出店要請が増え、農家とのつながりもできてきた。
「ここには魅力的な産物や人材が豊富にある。個性豊かで、おいしいビールを造り出せる可能性が十分にありますよ」