地域に生きる“みまさか”の若手たち
藤本愛子さん =美作市柿ケ原
地域に生きる“みまさか”の若手たち
藤本愛子さん
=美作市柿ケ原
『目的地』となるカフェになるのが目標
移住して2年が過ぎた。「孫や娘のようにかわいがってもらっています」
神戸市生まれ。大学で福祉を学び、大阪市の児童養護施設に勤め、24歳の時、憧れていた東京へ。カフェで約10年働いたが、30代半ばに差し掛かり、人生設計を考えた。「都会暮らしにも疲れた。自然豊かな田舎で何かに挑戦したい」。漠然と思うようになった。
パン作りを習い、移住先をあちこち探した。岡山にゆかりはなかったが、県北の風景に癒やされた。「なんか、いいな」と引かれるようになった。
東京で知り合った山田高寛さん(39)=神奈川県出身、花田晃子さん(36)=東京都出身=と3人で2016年、まずは岡山市に移住した。藤本さんは花田さんとともに岡山市の米粉パン専門店で働いた。
念願の3人での田舎暮らしに向け、次のステップに踏み出した。
柿ケ原の民家を手に入れ、18年10月に引っ越した。集落の集まりにあいさつに出向くと、温かく迎えられた。店舗となる民家も近所の持ち主が快く貸してくれた。
「どんな店を開いて暮らしていこうか。受け入れてくださった地域への恩返しもしたい」。おむすび専門店、総菜店も考えたが、米粉パン専門店での経験を踏まえ、米粉のシフォンケーキに特化することにした。
人の縁がつながり、導かれるようにたどり着いたことから、店名をつけたのは言うまでもない。
山田さんは店のウェブサイトを管理、花田さんは店の手伝いと、3人で協力。市内外のマルシェやイベントに参加したり、商品を置いてくれる店舗を開拓したりして販路は徐々に広がった。
新型コロナウイルスの感染拡大で、マルシェなどは中止となり、店舗は3カ月間の休業に追い込まれた。
再開後、しっとり、ふわふわとした米粉ならではの味わいのシフォンケーキをより多くの人に味わってほしいという思いは強くなった。商品のレパートリーも、プレーン、コーヒーチョコ、ラムレーズン、キャラメルクルミなど10種類ほどに増えた。
家庭菜園も始めた。もちろん住民に教わりながら。地区の田植えや稲刈りの手伝いもした。人々との“えんむすび”のためだ。
「山奥だけど、あそこに行ってみようと『目的地』となるカフェになるのが目標」
これからも出会う人々との縁を深めながら、この地に根を張っていく。