地域に生きる“みまさか”の若手たち

川口卓也さん =津山市高倉西

地域に生きる“みまさか”の若手たち

川口卓也さん
=津山市高倉西

毎週金曜、津山市中心部の元魚町商店街。軽トラックの荷台に取り付けられたカウンターでコーヒーを飲みながら談笑する若者らの声が響き、車内からはスパイシーなカレーの香りが漂ってくる。
川口卓也さん

楽しいことを続け、自分を目指す誰かが出てくるようになれば

2年前の春から続く「金曜喫茶」は、移動喫茶「Chmney」の店主・川口さんの発案だ。別のイベントに出店した際、そずり肉を使ったメニューを提供する移動カフェのオーナーと知り合い、意気投合。2店共同で出店できる場を探していたところ、商店街の活性化につながると、元魚町商店街が快諾してくれた。

カウンター付きは珍しいという移動販売車は、川口さんの特別仕様。メニューを書いた黒板や古本が並ぶ棚で、街角の喫茶店のような雰囲気を演出する。

カレーのライスは、兼業農家の両親が津山市内で育てるあきたこまち。「顔が分かっていて、誰より信頼できる生産者」のものを使う。

 

「会社ではなく、『川口君がいいね』と言ってもらえるような、自分の足で立って自分を磨いていける仕事をやりたくなった」

幼少期、兵庫県相生市から父幸治さん(70)の出身地・津山市に移り住み、2001年に津山工高を卒業。就職した鉄道会社で駅員や車掌として働き、やりがいや楽しさを感じていた。

その一方、「個人のやりたいことを通すには限界がある」とも思うように。知人だったコーヒー店主のとことん豆にこだわる姿勢に刺激を受けたことも背中を押した。

長男で「実家を放置できない」と、当時住んでいた高梁市から8年ほど前に地元に戻り、15年1月に退職。自分の店を持つ夢に向けて始動するも思うように物件が見つからず、移動販売形式で始めることにした。

16年5月、義兄が経営する美作市の鉄工所で営業を開始。コーヒーの味や古民家風のレトロな雰囲気が口コミで評判を呼んだ。現在は金曜喫茶を含めて津山、美作市に週5日ペースで出店し、各地のイベントにも赴く。

ギャラリーへの改装が進む津山市山下の古民家で、新たなイベントを計画している。

各地への移動販売で人脈は広がり、こだわりの古本や古道具などを扱う市内外の4店が自慢の品を並べるマーケットを開く。

「出店者それぞれが、好きなことができる場所」にするつもり。12月6日を皮切りに、時には出店者を入れ替えながら月1回程度行う予定だ。

自身待望の店舗を開くため、勝央町にある古民家を改修する。2年後をめどにオープンを目指している。

移動販売や開店準備に日々を過ごし「20年、30年と楽しいことを続け、自分を目指す誰かが出てくるようになれば」と思う。そうなれば「初めて津山のために何かできたと感じられる」。

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