地域に生きる“みまさか”の若手たち

稲田 晴江さん =新庄村

地域に生きる“みまさか”の若手たち

稲田 晴江さん
=新庄村

新庄村産の落葉木・クロモジの枝葉を煮出して混ぜたカフェラテやソーダ、村特産のもち米・ヒメノモチ粉を使ったドーナツ—。 村の素材を生かして手作りした飲み物や菓子を移動販売する「32’sサニーズ cafeカフェ」をスタートして来春で丸9年がたつ。
稲田 晴江さん

おいしい食べ物をカフェを通じてPRしていきたい

「クロモジはハーブのような清涼感が特長で、飲むとちょっとだけ幸せな気分になれる。ヒメノモチのドーナツはもちもちした食感で、リピーターが多い人気商品なんですよ」と太鼓判を押す。

「ぽかぽかした陽気に心が躍るように、周りを幸せにできれば」。店名の「サニーズ」は「よく晴れた」や「陽気な」を意味する「sunnyサニー」から取った。「32」という数字にしたのは少ししゃれた雰囲気を出したかったからという。

 

中学卒業後に村を離れ、大学生だった姉と暮らしながら京都の高校に通った。26歳の時にUターンし、1年ほどは村役場の臨時職員として働いた。

当時、十二指腸潰瘍を患って体調が優れない日々が続いていた。そんな時、クロモジと出合った。父・泰男さんが山からクロモジを採ってきて「胃腸に良いから」と煎じてくれた。

「体調が良くなり、爽やかな味わいで心も癒やされた。村にこんなにすてきな飲み物があったんだと驚いた」と振り返る。

カフェ巡りが趣味で、料理好きだった稲田さん。関西に住んでいた頃から抱いていた「いつか自分のお店を持ちたい」という夢は少しずつ信念に変わった。

臨時職員を退職して2012年4月、村の桜祭りで、テントを張っての移動式カフェを始めた。13年4月からは、軽自動車をキッチンカーに改修した。口コミなどで反響が広がり、県南からの出店依頼が舞い込むようになり、活動範囲が広がった。

いつもの年なら毎週のように県内各地のイベントに呼ばれて飛び回っているはずだが、新型コロナウイルスの影響で出店機会が減った。

活路を見出そうと、来年4月に真庭市久世地域に店舗をオープンする。「店舗があれば、イベントに左右されずに商品を届けられ、収入も安定するはず」。クロモジのジュレやジェラートを使ったパフェを看板商品として売り出していくという。新たな挑戦に迷いはない。

移動カフェを始めて、若い人たちの村の知名度の低さに気付かされたという。人口は県内最小の約910人。規模こそ小さいものの、旭川の源流域の美しい川と山、そこで育まれたおいしい食べ物をカフェを通じてPRしていきたいと誓う。

小学生と中学生、高校生の3姉妹の母でもある稲田さん。「たとえ小さくても多くの人が村の食材を買ってくれるようになれば、子どもたちの代も住み続けられる地域づくりにつながるはず」

PageTop