地域に生きる“みまさか”の若手たち
杉原 利充さん =真庭市本郷
地域に生きる“みまさか”の若手たち
杉原 利充さん
=真庭市本郷
好きなことを仕事にし、地域を盛り上げられることを示したい
生みの親である杉原さんが2019年11月初旬に製造販売の合同会社を仲間と立ち上げ、下旬には自宅敷地内の古い家屋を改修してショップを開店。ロゴを大きく描いたカジュアル服や雑貨を販売している。市内の企業や飲食店、温泉旅館、市役所などから、ロゴを使ったコラボTシャツやユニホームの依頼もひっきりなしに舞い込む。
「都会的な雰囲気があるのに、実は真庭のアピールもしている。このギャップが受けていると思う」。杉原さんは人気の秘密をこう話す。
ただ、これまでの道のりは決して平たんではなかった。0867のロゴも苦境から生まれたものだった。
音楽などで自分を試そうと20代後半で真庭から上京。すぐに生活費稼ぎのバイトに追われる日々に陥った。上京前はバンドを組み津山を中心に県内外でライブを展開。CDも出したが、東京での知名度はほぼゼロ。新しいバンド仲間もできず「挫折感でいっぱいだった」。
自殺の多さや道端に人が倒れていても気に留めない冷たさを目の当たりにして人間不信に陥り、焦りや孤独に追い詰められていった。
次第に思い出すようになったのが、人付き合いの濃さが大嫌いだったはずの古里。0867をデザインしたTシャツで街を歩いたり、ステッカーを故郷の友人に贈って喜んでもらったりすることで、少しずつ自信を取り戻した。11年3月の東日本大震災を機に約5年の東京暮らしに見切りをつけ、帰郷した。
戻ってもしばらくはデザインで身を立てるか迷っていた。背中を押してくれたのが、共同代表として合同会社を設立することになる志賀英夫さん(36)=蒜山下見。「『絶対ビジネスになる』『お前を食わせる』って何度も熱く語ってくれた。おかげで覚悟ができた」と感謝する。
今月下旬にはショップの開店1周年記念のセールイベントを開く。幅広い年代の人がロゴを身に着け、見知らぬ同士でも会話が生まれやすい環境を広げることで、真庭の一体感づくりはもちろん、市外、県外との交流拡大に発展させる夢を目指す。
ロゴのひび割れは現状を打破し、新しい道を切り開く決意を込めてある。
「かつての自分のように『真庭は面白くない』とか『いい仕事がない』と思い込んでいる若者がいるはず。でも真庭で好きなことを仕事にし、地域を盛り上げられることを示したい」
サクセスストーリーはこれからが本番だ。