地域に生きる“みまさか”の若手たち

ホルツヒューター・カイル・ロナルドさん =久米南町上籾

地域に生きる“みまさか”の若手たち

ホルツヒューター・カイル・ロナルドさん
=久米南町上籾

「ここには木も、畑も、田んぼも、水もある」。美しい棚田と里山に心を奪われた。日本の原風景が残る久米南町上籾地区。滋賀、京都、広島、千葉県と移り住み、たどりついた理想の地。自身が追い求めた全ての資源があった。
ホルツヒューター・カイル・ロナルドさん

集落維持へ自然と共生

カイルさんは米国出身。環境に優しい農業をベースに循環型社会の実現を目指す「パーマカルチャー」を実践している。パーマカルチャーとは、英語で永久を意味する「パーマネント」と、農業の「アグリカルチャー」の造語だ。

2017年春に移住すると、すぐに「パーマカルチャーセンター上籾」を開設した。雑木林と田畑が混在する約3万3千平方メートルの広大なフィールドで、ミミズや微生物などを活用した田を耕さない稲作、ストローベイルハウスと呼ばれる藁(わら)を使った家づくりなどのワークショップを月1、2回ペースで行っている。

母国での高校卒業を間近に控えた18歳の時、ストレスから体調を崩し、数カ月間の引きこもり生活を送った。自分はどんな生き方をしたいのかを考え抜いた末、農業を軸に自然と共生しながら生きていこうと決断した。

大学生のころ、日本文化に興味を持ち、長崎県の短大に半年間留学した。01年に再来日。和歌山県の高校で英語講師を務めながら、自然農法を勉強した。その後、パーマカルチャー発祥の地・オーストラリアに渡り、講師の資格を身に付けた。日本大大学院でストローベイルハウスについて研究し博士号を取得した。

本業は左官業。一級左官技能士の国家資格を持っており、町内の農村型リゾートセンター・治部邸(山手)の外壁補修も手掛けている。

昨春から町消防団員を務める。地域の伝統行事にも参加し、昨夏には地元・清水寺の「護法祭」に参加し、ちょうちんを持って祭神を迎える行列に加わった。今月開かれた上籾神社の秋祭りでは家々を回り、獅子舞を披露した。

地域に溶け込むうちに、深刻な斜陽の現状も見えてきた。

上籾地区には約60世帯、100人弱が暮らす。平均年齢は65・1歳という限界集落だ。「家屋の半分近くが空き家かもしれない。このままではそう遠くない将来、コミュニティーが崩壊してしまう」と懸念する。

そうならないためにもパーマカルチャーを普及させたいと誓う。田を耕さない稲作は農家の労力を軽減し、担い手不足解消や棚田保全につながる可能性があると信じている。

 

「自然の中で子どもを伸び伸びと育てる教育に力を入れ、子育て世代が移り住んでくれるような取り組みが進めば」

左官の腕を生かし、古民家を修復して移住者の受け皿づくりに協力する心構えはできている。

「自分が年老いたころ、空き家に移住者が暮らし、藁の家がぽつりぽつりできていたらいいね」

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