地域に生きる“みまさか”の若手たち
丸尾 宜史さん =津山市
地域に生きる“みまさか”の若手たち
丸尾 宜史さん
=津山市
戻って来たい地域つくる
戻って来たい、住んでみたいと思える地域をつくる―。 レプタイル(津山市田町)社長の丸尾さんは、掲げる目標の達成には「面白い企業と人を集める」ことが必要と言う。 ウェブサイト制作、インターネットで資金を募るクラウドファンディング(CF)や県北への就職・定住を促す求人サイトの運営、起業支援に創業スクール…。2013年の設立以来、矢継ぎ早に打ち出してきた事業は、いずれも「地元のため」だ。 地方では珍しかったCFをいち早く取り入れたことなどで注目を集め、自社の業績を順調に拡大させている今も「収益を上げ、さらに地域に役立つ事業に投じていくのがレプタイルのやり方」と軸はぶれない。
もともとは東京を選んだ一人だった。
鏡野町で生まれ、津山高から法政大に進学した。古里のことは気になりながらも、希望の職場があった東京で就職。ベンチャー企業に転職してシステムエンジニアとして働いた。
家庭の事情でUターンしたのが、ちょうど10年前。津山市内のシステム会社に就職し、新規開拓の営業担当として外回りに汗を流した。
3年間で約600人の経営者と会い、全国的に競争力があるサービスや製品を提供していながら「良い人材がいない」という悩みを知る。一方、同級生らから「故郷に戻りたくても良い仕事がない」と言う声。「ギャップを埋めたい」と起業を決意した。
大学在学中、津山圏域の就職説明会に参加したが「ピンと来なかった」という。
自身の経験も踏まえ「外に出た若者にとって地元就職は精神的にも物理的にもハードルが高い。それは地元で働く面白さが見えていないから」と分析。経営者自身が気付いていない強みや、地域の魅力の「見える化」に努め、全ての取り組みで心掛けるのは「都会で働いていたあの頃の自分が見て、戻って来たいもの」だ。
2人で立ち上げた会社は、6年で30人を超え、多くをUIJターン者が占める。昨年、5年間で10億円の事業創出を目標に始めた創業スクールの1期生は20人のうち、5人が飲食店などを開き、6人が起業準備中。今期は高校生から60代まで20人が学ぶ。
実績を評価され、他地域から誘われることもあるが、「古里で当事者意識で動かないと楽しくない。逃げ場のない立場だからこそ、本気でやれる」と地元にこだわる。
近く市中心部にシェアオフィス、UIJターン者が集えるカフェやゲストハウスを備えた施設「INN(イン)―SECT(セクト)」を開業する。狙いは、まち中のにぎわいづくりとともに、さまざまな立場の人たちが出会う場を提供することにある。
「『こうなったらいい』という地域のビジョンを共感できる人たちが緩やかにつながれば、自発的に町が変わっていく火種が生まれる」。そこに風を吹き込み、大きな炎にしていくつもりだ。