地域に生きる“みまさか”の若手たち
谷本 幸子さん =鏡野町
地域に生きる“みまさか”の若手たち
谷本 幸子さん
=鏡野町
人と人の“縁”をつなぎ、喜んでもらうことが好き
「自分から動いて、相手のところに出掛ける。地域で取り残される人がいないように」。明るい笑顔に楽しげな声。フットワークの軽さが持ち味だ。
看護師の資格を持つが、活動を振り返ると取り組みは多岐にわたる。
地域のお年寄りの見守り活動につなげようと、姉夫婦が鏡野町内で営むパン店で個人宅にも出向く移動販売を始めた。同じく姉が理事長を務めるNPO法人「いーなプロジェクト」(同町)の運営にも携わり、作州地域で子ども向けの防災イベントや婚活事業を行った。
空き家を再生し、イベントスペースなどとして昨年9月にオープンした「ひととば津山」(津山市椿高下)ではPRイベントを企画。国内旅程管理主任者の資格を取ったのは障害者や高齢者の旅行で添乗員を務めるためだ。県北のおいしいものを県南に伝えようと、岡山市内の居酒屋を1日借りて、そずり肉や干し肉を提供したこともある。
原点は、県北の医療機関で看護師として直面した高齢者の置かれた厳しい環境だ。
救急車で運ばれてきた一人暮らしのお年寄りは手術に家族の同意が必要だったが、都会に住む息子から返ってきたのは「帰れるのは1カ月後」との答えだった。認知症の独居高齢者が転倒し、長時間誰も気付かなかったこともあった。病気を治しても帰った先の地域で行政の支援が届かない人もいる―。
2018年、看護師を辞めて津山市社会福祉協議会で生活コーディネーターに就いた。1年間、住民の困りごとに耳を傾け、地域を支える情報を集めつつ、県社会福祉協議会が主催する地域づくり講座などに参加。「いろんなところに所属して自分の思いに合う場所でやりたいことを形にしていった」と言う。
「人と話すのは好きだけどデイサービスは気が進まないといった理由で、地域に残されたような高齢者は多い」。パンを売りながら感じたことだ。そんな客の話なら1時間でも聞いた。
やりがいを感じていたパンの移動販売だが、3月で“卒業”。仲間と今月にも鏡野町を拠点とする一般社団法人「かがみらの」を創設し、新たな道を歩むことにした。
まちづくり、地域振興を図る商品やサービスの開発、移住・定住の促進など、掲げる事業は多いが、まずは空き家の利活用を手掛ける予定だ。「高齢者が一緒に内職したり、若い母親がチャレンジできたり。空き家を使って面白いことができるかな」と夢も膨らむ。
「楽しい×挑戦」。肩書の代わりに、名刺にこう大書している。「人と人の“縁”をつなぎ、喜んでもらうことが好き。できるのに動かないのも嫌。地域の人が笑顔でいられることに挑み続けたい」