地域に生きる“みまさか”の若手たち
leal.lab(レアルラボ)代表藤田 亮太さん =真庭市余野
地域に生きる“みまさか”の若手たち
leal.lab(レアルラボ)代表藤田 亮太さん
=真庭市余野
地方だからこそ成り立つライフスタイルを
「美作に移住したきっかけは」「鹿革に着目したのはなぜですか」「今後の展望は?」
藤田さんが落ち着いた口調で問いかける。県北の起業家や多様な生き方を実践している人を紹介するインターネットラジオ番組の収録。この日のゲストは、Iターンで移住した美作市上山地区で鹿革の加工品作りによる地域活性化に取り組む梅谷真慈さん(33)で、新型コロナウイルス感染防止のためウェブ会議アプリで行った。
約2時間にわたった収録。地域おこし協力隊員として活動したのが縁で移住したこと、駆除した鹿の皮が有効に利用されていないこと、合同会社Tsunag(ツナグ)の設立、クラウドファンディングでの資金調達…。梅谷さんの言葉一つ一つにしっかりと耳を傾け、活動にかける思いや人生観を深掘りしていった。
番組は1月にスタート。耕作放棄地の再生に取り組む農業者、店先でお酒を味わう「角打ち」を始めた酒店主など約10人を取り上げたが、「まだ事業と呼べる段階ではありません」と藤田さん。それでも「人の思いや感情をダイレクトに伝えられ、本質に迫りやすい音声コンテンツのニーズは必ず増える」と力を込める。
新見市出身。徳島大工学部で中山間地の空き家問題や都市デザインを研究した。講義で出会った建築士らの縁で、「葉っぱビジネス」で成功した徳島県上勝町や都会のITベンチャー企業多数がサテライトオフィスを置く同県神山町を訪れた。地域資源を見直して過疎地の振興を図る手法はまだ珍しく、「地元の人が当たり前に感じていることでも、違う目線で見ると財産になる」と肌で感じた。
大学院を修了し、横浜の設計事務所に勤めた後、26歳でUターン。真庭市で温泉旅館の支配人などを務めていたが、同市の起業家らとの交流をきっかけに「自分もプレーヤーとなって何かやってみたい」との思いが募り、昨年フリーライターに転身した。
県観光連盟のwebサイトや県内の地域おこし協力隊経験者のネットワーク組織を通じて情報発信するほか、美作県民局と山陽新聞津山支社、美作地域の若手による「みま咲く未来プロジェクト」のホームページの運営に携わることも決まった。4月からは真庭市余野下の農村型リゾート施設「高仙の里よの」の管理人も務める。
「何を通じて人の役に立てるか、まだ探っている感じ」という藤田さんが立ち上げた活動の母体は「leal(れある).lab」。lealは、local economy and lifestyleの頭文字。地方の経済と生活を研究・発信していくとの思いを込めた。
「地方だからこそ成り立つライフスタイルもあると思う。新しい働き方や生き方を示すことで、次の世代の道しるべになれたら」。藤田さんの挑戦は始まったばかりだ。