地域に生きる“みまさか”の若手たち

加藤 喜江さん =津山市東一宮

地域に生きる“みまさか”の若手たち

加藤 喜江さん
=津山市東一宮

 「ガラス張りの造りなので、中に人がいるか、いないかすぐ分かる。プレッシャーはあるけど、にぎわっている場所には、お客さんも入ってきやすい。商店街の人通りを増やす役に立ちたいと思って」と話すのは“校長”の加藤さんだ。
加藤 喜江さん

商店街は子どものころ本当に楽しい場所だった

2月下旬の平日。津山市の中心商店街は行き交う人もまばらだが、一角にあるカフェ「ひつじの学校」(京町)は女性グループや学生でほぼ満席だった。

 昨年3月にオープンし、すぐさま人気店に。地元の野菜や調味料にこだわったランチやクレープを目当てに、平日、週末を問わず大勢が訪れる。特にせいろで蒸したおにぎりはインパクト満点。写真共有アプリ・インスタグラムで発信しているだけだが、遠く関西圏から、わざわざ店を訪ねてくるほどだ。

 あえて“学校”と名付けたのは、街中で駅からも近い立地から。

 「市外や県外から旅行や出張で訪れる人に、作州地域の良さを知ってもらう場にしたい」。そんな思いで、地元作家の陶器や木工品、老舗のしょうゆ、津山産ショウガを使ったシロップ、蒜山のガマ細工といった品を店内で販売する。

 「とにかくカフェが好きで、趣味はカフェ」と言い切る。

 市内で生まれ育ち、家庭の事情もあって高校卒業後も地元に残った。雑貨店や洋菓子店で働きながら「いつかは店を開きたい」と願い続け、休みの日には友人と、県内外のカフェを巡った。

 夢がかなったきっかけは、同じカフェ好きの夫・元治さん(46)との結婚。自宅改修時にカフェが営める間取りにし、2010年、自宅で火曜~土曜にランチを限定10食提供する「cafe(カフェ) Roca(ロカ)」を始めた。

 最初は集客に苦戦したものの、3年目には予約で売り切れる日も増えた。「そろそろ次のステップに」と14年に東一宮に移転。脱サラした夫が内装やコンセプトを、喜江さんがメニューを担当。順調に客足を伸ばし、県内外から男女問わず来客する評判店になった。

「商店街は子どものころ本当に楽しい場所だったのに、今の高校生たちには『アルネ・津山までの屋根のある道』になってしまっている。駅から中心部への動線も寂しい。何とかしたい」

 新たな店の場所を商店街にしたのは、かつてにぎわいのあったこの地で、出会いにも恵まれ、都会に出なくても充実した日々を過ごせてきたからだ。

 店舗拡大を視野に入れていたころ、商店街の空き店舗対策の担当者や建物のオーナーと縁が生まれたことも決断を後押しした。

 「ひつじの学校の盛況ぶりを見てもらうことで、若い人が『商店街でもチャレンジできる』とか『津山に戻ってお店を出してみよう』と思ってくれれば」と願う喜江さん。

 新型コロナウイルスの影響で4月26日~5月6日は弁当のテイクアウト(予約制)のみにするが、収束後は食のワークショップなどで地域の魅力をさらに広める場にするつもりだ。

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