地域に生きる“みまさか”の若手たち

松永 真樹さん =津山市神戸

地域に生きる“みまさか”の若手たち

松永 真樹さん
=津山市神戸

津山市神戸で松永建材店を営む松永さん。 建築資材の販売、住宅リフォーム、ガーデニング施工といった事業の延長で、美作ヒノキを使ったオーダーメードのシステムキッチンや庭に設置できる家庭用ピザ窯を商品化してきた。
松永 真樹さん

「県北の素材を使って、生活を彩るきっかけをつくりたい」

「休日にお父さんがピザを焼いてくれる庭。そんな暮らしまで提案できるじゃないですか」。
ピザ窯の購入者には生地の発酵から焼き方、ソースの作り方まで伝授するこだわりようだ。
終戦間もない1945年、祖父が徳守神社近くで創業。土壁をはじめ、かまどや五右衛門風呂の設置など家づくりを担う左官に建築材料を提供してきた。
「県内で一番のはずです」と松永さんが胸を張るのが左官用鏝(こて)の品ぞろえ。
先がとがったものや丸みのあるものなど形や材質の違う大小約200本が売り場の壁一面に並ぶ。

創業時からの柱である左官材料販売だが、高度成長期以降、土壁はパネルに、五右衛門風呂はユニットバスに変わり、ホームセンターや家電量販店、ネット通販との価格競争も激しさを増している。

大学進学で上京し、卒業後にテレビ局などで働いた松永さんがUターンして家業を継いだ2003年には、家づくりで左官が活躍する場は狭まりつつあった。
新たな柱を模索し、見いだしたのが「県北の良さ。田舎の素晴らしさ」だった。その思いを形にしたヒノキのキッチンやピザ窯を通じて松永さんのメッセージが伝わり、多くの顧客との縁が生まれた。

12年、3代目社長に就任し、つやま産業支援センターの「メード・イン・津山」プロジェクトに参加したのを契機に、仲間と津山発のブランド「ANDLIFE(アンドライフ)」を立ち上げた。

「地方のイケてるライフスタイルの発信」がコンセプトのANDLIFE。家具、木工、金属加工などにかかわる若手経営者ら10人がメンバーで、昨年8月、城東地区にショールームを開設した。津山の職人が地元素材も取り入れて、津山で制作したカジュアルでモダンな椅子やテーブル、本棚など約50点を展示販売している。

「豊かな生活ができるのは都会だけではない」。

松永さんらメンバーが目指すのは、田舎で楽しくゆったりとした生き方への共感を広げること。津山をはじめとした地方に住みたくなるような価値観を発信する。
今年はメンバーが講師となってワークショップを定期的に開く方針だ。
メンバーは先月、津山城跡(山下)の石垣改修工事に伴い伐採された直径15〜50センチ、長さ1・2メートルの桜の幹を5本入手。今後、箸やコースターなどを制作するワークショップに活用するとしている。

「津山の面白いもの、面白い人を発信することで、津山の良さを知ってもらえれば」。

田舎暮らしを彩る松永さんの活動は5年、10年と続いていく。

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