地域に生きる“みまさか”の若手たち

梅林 保明・佑妃さん =真庭市落合垂水

地域に生きる“みまさか”の若手たち

梅林 保明・佑妃さん
=真庭市落合垂水

「口の中でほろっと溶ける食感。絶対に残さなきゃいけない味だと思った」。2人の歩みを決定づけたのはようかんだった。
梅林 保明・佑妃さん

伝統守る商いで恩返し

約8年前のこと。佑妃さんが、交際中だった保明さんの実家である「梅田屋羊羹(ようかん)店」(真庭市落合垂水)から名物商品を取り寄せた時の衝撃を振り返る。

2人の出会いはフランス・パリ。洋菓子職人としての腕を磨くため渡仏した先がたまたま同じ工場だった。世界最高峰の洋菓子の本場で学ぶうちに、2人はシンプルな材料で素材の味を引き出す和菓子の奥深さを再認識するようになっていた。

佑妃さんがようかんの味にほれ込んだのも無理はなかった。

 

保明さんは落合高(現・真庭高落合校地)を卒業後、専門学校を経て東京の洋菓子店に就職。腕を見込まれ、パリの工場に勧誘された。東京出身の佑妃さんは保明さんとは別の洋菓子店で働いていたが、スキルアップのため海を渡った。

佑妃さんがパイやタルトの生地を作り、保明さんが窯で焼いた。仕事を通じて2人は引かれ合った。交際を始めると、休みの日にレストランやケーキ店、マルシェに出掛け、チーズやフルーツを味わって味覚を養った。和菓子と洋菓子のそれぞれの特長を語り合ったことはかけがえのない思い出だ。

2年ほど交際し、2014年に結婚。「梅田屋」を継ぐため、翌年、真庭に帰郷した。佑妃さんが住み慣れた東京を離れることに全く迷いはなかった。

落合地域にはようかんを作る老舗店が「梅田屋」を含めて数店あり、昔から「落合羊羹」のブランド名で知られる。店同士が切磋琢磨(せっさたくま)し、伝統を守り抜いてきた。

とはいえ、人口減少に伴ってお年寄りも減っているのか、ようかんの売り上げは右肩下がりという。創業120年の屋号を守るため、2人は新商品の開発に精魂傾けた。

試行錯誤の末、寒天に酸を混ぜても固まる独自の技術を編み出し、ジャスミンやレモン、緑茶などを混ぜた洋風のゼリー商品を開発した。女性向け有名ファッション誌で紹介され、結婚式の引き出物などとして多い月は100個以上の注文が舞い込む。約10種類のマカロンも人気だ。

地元の酒造会社と協力し、酒かすを使ったマカロンや酒の仕込み水で作るゼリーなども開発。地域のイベントなどでPRしている。

洋菓子のウエートを高めたことで年々、若いお客が増えているという。

それでも「洋菓子はあくまでようかんの“引き立て役”」だと保明さん。愚直に、誠実にようかんを売ることが商いを支えてくれた地域への恩返しだと思っている。

「洋菓子を目当てに来た若いお客さんが『ようかんも買っていこう』と思ってもらえるようにしたい」。2人は口をそろえた。

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