地域に生きる“みまさか”の若手たち
大橋 由尚さん =西粟倉村大茅
地域に生きる“みまさか”の若手たち
大橋 由尚さん
=西粟倉村大茅
誰もが活躍する拠点を
午前は経理など法人業務を担当。午後は放課後等デイサービスで指導員として働く。古里に戻って7年。村の消防団に入り、移住者中心のフットサルチームに所属。神社の祭りにも参加している。仕事もプライベートも充実していることを実感している。
津山市の高校を卒業し、兵庫県の福祉系大学に進学。神戸市の高齢者向けデイサービスセンターに勤めた。
会社が運営する別施設の現場マネジャーとなった。懸命に働いたが、事業拡大につれて自由な雰囲気が失われていき、精神的にきつくなった。
「地元に帰ろうか」。30歳を前にUターンの思いが芽生え、父平治さん(65)に相談した。帰ってこいとは言われなかったが、帰るのなら若いうちがいいと諭された。
豊かな自然に心は落ち着く。かつて過ごしていたころとは違って若い移住者が増え、それぞれが何かに挑戦していることにも後押しされた。
「外から見た村の“景色”が今までと違う眺めに映った」
入社8年目の年末に退職し、村に戻った。福祉の経験を生かして美作市内でヘルパーの仕事に就いた。「障害者支援の施設をつくろう」と父から声がかかり、仕事を辞めた。
母校である旧影石小に事務所を構え、2014年、就労継続支援B型事業所を村内で初めてオープン。運営の責任者を務めた。
「困っている人たちがこの狭い地域にもいることが肌で分かった。何とかして支えていきたいという思いが募った」
放課後等デイサービスを立ち上げたのも「子どものころから周囲と関わる機会を増やせば、より暮らしやすくなるのではないか」と考えたからだった。
B型事業所も放課後等デイサービスも運営が軌道に乗り、それぞれ後継の責任者も見つかった。
法人名の「じゅ〜く」は、障害のある人たちが社会で活躍できるための“塾”になればとの思いから名付けた。
徐々に視界は開け、新事業に挑む。障害者のグループホームの開設だ。
「障害者も高齢者も子どもたちも、元気な人もそうじゃない人も、誰もが持っている力を発揮できれば村での生活は充実するに違いない。それぞれの施設がその拠点になれたらと思っているんです」
小さな村で目の前の仕事を日々積み上げていく中で、理想とする未来が見えてきたようだ。