ニューノーマルへ-コロナとその先-

お知らせ
【#13】新庄村発、移動カフェ運営・稲田晴江さん
ニューノーマルへ-コロナとその先-
2020.09.15

【#13】新庄村発、移動カフェ運営・稲田晴江さん

〜人間として当たり前のことを〜

 

私は岡山県の新庄村に生まれ育ち、一度は故郷を離れ大阪で暮らしていたが、27歳でUターンした。
「新庄村は宝の山だ」と思っておりその素材を使い村を PR すること を目的とした移動カフェ「32’s cafe」を営んでいる。
軽バンを改造したキッチンカー(愛称サニコ)を走らせ、岡山県内のいろいろな場所へ出没している。
移動カフェ運営以外にも、RSK ラジオ ウェザーリポートや、SDGs de 地方創生公認ファシリテーターなど、精力的に活動を行っている。
また、プライベートでは高 3・中 3・小 3 の三姉妹を一人で育てる、いわゆるシングルマザーだ。 

 

このコロナ禍で、ことごとくイベントが中止となり、移動カフェ自体の仕事がストップした。
32’s café は、店主ひとりで活動しているため、皮肉なことに、出店が無いことで母親業務がはかどった。
しっかりと子供達に寄り添う時間が出来たのだ。
普段、遠方で開催される会議が、すべて Web での開催となったため、シングルマザーの自分としては、それはありがたかった。会議へ出席するとなれば、片道 1~2 時間かけ車で移動して出席していたが、自宅に居ながら参加することが出来る。浮いた時間は、家事や子供達との時間に充てることが出来る。これは、大きな発見であったし、働くお母さん達 にとっても画期的な事実だと感じた。
地方で、田舎で女性が勢力的に活動していると家を留守にすることも多く、「子供を放っておいて、好きなことして!」とよく耳にする。
余談だが、本人達としては一 切放っているつもりも、放っとかれているつもりもサラサラ無いのだが、地方ではまだまだそういう目で見る人が多い。
とはいえ、親も子も、どちらの立場から見ても「同じ空間に居る。一緒の時間を過ごす。」
という安心感は絶対的なものだと、このコロナ禍で感じることが出来た。 

 

一方ビジネス面では、シングルマザーの私が、どうにかW受験生を含む子供 3 人を 育てていかなくては、と模索する日々の中で、黒文字茶の販売に力を入れた。黒文字茶とは、新庄村に自生しているクスノキ科の植物の黒文字をお茶にしたもので、新庄村では昔から胃に良いと飲まれてきた。植物の黒文字自体は和菓子の高級爪楊枝としては有名だが、お茶としての認知度は低い。
しかし、実際に味わっていただくと、その香りに驚かれ、魅了されるリピーターさんも多い。私自身、10 年前、十二指腸潰瘍を患い関西から帰って来て、父に「このお茶、胃にええ けぇ飲んでみ」と勧められるまで、その存在は知らなかった。
初めて口にした その衝撃の瞬間は、今でも鮮明に覚えている。
爽やかで清涼感があり、アールグレイやカモミールなどのハーブのような、とてもオシャレな香り。スパイシーで、なんとも癒される。
一 瞬で私は、黒文字の虜になった。 

32’s café では、このお茶を、「On5chi4in 新庄村産黒文字茶」として販売している。この”On5chi4in(オンコチシン)”とはまさに、温故知新。前に学んだことや昔の事柄をもう一度調べ たり考えたりして、新たな道理や知識を見い出し自分のものとすること。
「On5chi4in」は、新庄村の素材を使い新庄村の伝統技術や知恵を伝承する事を目的とし、古くから有る和のものを、自分なりの新しいセンスを加え発信する 32’s café の雑貨ブランドの名称。
黒文字は、よく整備のされた針葉樹林に自生するため、森林の整備とも関係性が強く、土 砂災害の抑制や新しい産業の創出にも繋がり、持続可能な村づくりにも大きく貢献できる素材だ。また、昨年には愛媛大学の研究により、黒文字には、インフルエンザや、ノロ、ロタウイルスなどのウイルスの抑制効果があることも実証された。このような商品のバックグラウンドやブランドに込めたのストーリー、生産過程などをSNS などで発信することにより、共感したり興味を持って下さる方がファンとなり、お買い求めいただいている。しかしながら販売場所は限られていたので、このコロナ禍を機に商工会さんを通じて ECサイトを開設することにした。

この黒文字茶を通じてたくさんの方々と繋がっている。

お茶の加工は、大佐のお茶工場丸菱さんが、地道にひとりで製造している私の様子を SNS で発見して下さり、コラボしませんか?とお声がけを下さった。こんなに小さな個人に対しても、とても真摯に、また柔軟に対応下さり、昨年は、結婚式のオリジナル画像プチギフトの黒文字茶も手掛けてくださった。黒文字は、中国地方をはじめ「福木」とも呼ばれ縁起の良い木として、正月飾り、生け花、茶花などに利用されている。新郎新婦の地元真庭産の大好きなもので、ゲストをおもてなしでき、両親も喜んでくれたし、携わることが出来た私たちまで、とてもハッピーな気持ちを味わわせていただいた。
また、昨年、ジェラート醍醐桜の山本英伸君が「ジェラートワールドツアージャパン2019横浜」において 32’s café の新庄村黒文字茶を使用したジェラートで、見事 3 位を獲得された。同い年の彼は、常に味に妥協することなく、実直に牛とも商品とも向き合っていて、天才ジェラティエーレだと思う。そして、何より人として尊敬している。
さらに、新見市でアロマ蒸留ラボを営む薬剤師の白石須磨子さんは、新庄村産黒文字を使用したオイルを作成され百貨店などでも人気商品となっている。その蒸留の際に出来る蒸留水で現在、新商品の共同開発も行っている。バイタリティー溢れ、とても上品なのに、親しみやすく、常に前向きな彼女は私の憧れの女性のひとりである。 

私は、普段ひとりで活動している。しかし、孤独だと感じたことは無い。
たくさんのご縁に恵まれているからだ。 

このように、多くの素晴らしい尊敬出来る方々とのご縁により、精神的にとても豊かな人生を送らせていただいていると感じている。地方の魅力とは、いわゆる “田舎のいいひと” がたくさん身近にいて下さることだと思う。それは、田舎者と揶揄しているのではなく、豊かな自然や、美味しい作物などに育まれた田舎の人ならではの、まじめさや親切さや愛溢れる人間性のことを指している。面倒なことも頼まれるとなんだかんだ引き受けてしまう。困っている人を放っておけない。
そんな非効率的な部分も含め、私は “田舎のいいひと” が好きで、そんな愛溢れる方々とのご縁に非常に恵まれている。
皆さん地方素材や地方そのものの価値をよく理解され、活用されているカッコイイ方々。
そんな方々とお仕事をさせていただけることは、すごくありがたいことで幸福なことだと感じている。 

 

コロナ禍で改めて感じたことのひとつに、いまだかつて経験したことのない不安やそこからくる人々のイライラや批判や衝突がある。
このイライラや批判や衝突は、自分さえよければいい、という考えから生じるそれである。
「人としてどうか。」この当然のことが出来ていなかったからこそ様々な問題が生じている。
19 歳で母親になり、子供が子供を産んだ状態だった私が、子育てにおいて重要視してきたのは、「人としてどうか。」ということ。
こんなときだからこそ、意識的にひとりひとりが、他者に愛情と思いやりをもって接することでイライラより感謝や笑顔が溢れるのだ。
これは、きれいごとでもなんでもなく、持続可能な社会を築くためには、大まじめに必要不可欠なこと。

笑顔には副作用は無いそうだ。

 みんなが笑顔でいられる社会の実現のために今自分が出来ること、それは、まず自分の身のまわりの人に対して優しさと愛情をもって接していくこと。

ニューノーマルと言われているけれど、それは今まで先人が培ってきた、
「人として当たり前のこと」を当たり前のようにやるしかない。

 

32’s cafe 店長 稲田 晴江

facebookページ:https://m.facebook.com/32s.cafe

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