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津山工高「ステンレスネット連携事業」 企業が直接技術指導
「人間関係が良好」「健康的に働きたい」「趣味を楽しめる程度に給料がもらえるといいな」…。
7月中旬に津山工高(津山市山北)機械科の3年生37人と、津山圏域のステンレス加工会社でつくる「津山ステンレスネット」の加盟社10社の経営者ら14人が参加して開かれた交流会。「どんな会社で働きたいか」「どんな会社にしたいか」をテーマにしたグループディスカッションで、生徒たちからさまざまな意見が出された。
日々の仕事や勤務体系、待遇についても意見交換。加盟社の社長や工場長、製造部長らに高校生が率直な思いを次々ぶつけた。
高校生とステンレスネットの連携事業は、圏域外への若者の流出防止や企業で活躍できる人材の育成を目指し、市の外郭団体でステンレスネットの事務局を務める「つやま産業支援センター」(山北)が調整役となって本年度からスタート。交流会はこの産学官連携のキックオフ行事として開かれた。
10月下旬には、工業高生らが習得した技術や知識を競う場として12月から8部門で県予選が始まる「高校生ものづくりコンテスト」に向け、加盟社による技術指導も実施。6社の社員が高校を訪れ、溶接、旋盤部門に出場する5人に直接アドバイスした。
溶接では誤って部品に穴を開けた時の修復方法や溶接跡の整え方、旋盤は時間短縮のための新しい工法を指導。溶接の仕上げのこつを教わった2年小林朋愛ともえさん(16)は「実際に現場で働いている人に指導してもらうのは初めて。先生に教えてもらえないような細かいテクニックが学べた」と喜んだ。
直接指導は県予選が始まる直前まで月2回程度、企業が順番に受け持ち、生徒のサポートを続ける。
「学校の力だけは実現できない多くの企業と交流ができた。生徒たちの就職選択の幅も広がったはず」。機械科長の内田拡志教諭(33)は、ステンレスネットとの連携の手応えをこう話す。
初年度の反省を生かし、来年度からは交流会を3年生が進路を絞り込む前の春先に開催することや、他学科への拡大を計画。さらに生徒が企業先に出向いて行う実習も加盟社と検討していく考えだ。
同センターによると、市内には世界に技術を誇るものづくり企業があるものの、継承する担い手の不足で廃業を余儀なくされたケースがあるといい、「ステンレスネットとの連携が、高校生が優れた地場企業に目を向けるきっかけになれば」と期待する。
取り組みはまだ始まったばかりだが、ステンレスネットの会長を務める中村工業所(河面)の大津広宣社長(59)は「多くの生徒がものづくりに興味を持てば、地域の企業の発展にもつながってくる」と強調する。