お知らせ
4校連携「地域創生学」 課題を“わが事”と捉え
本日から、10回に渡って、山陽新聞朝刊に掲載されたシリーズ「この地に生きる 作州の高校から」を(全10回)を掲載していきます。
「津山について調べることで多くの魅力に気付けた。都会に憧れていたが、将来地元に戻って魅力を広める活動をするのもいいと思うようになった」
津山高2年杉山萌々香さん(17)が7、8月に受講した地域の課題や解決策を考える津山市内県立4高の連携講座「地域創生学」を振り返って話す。
観光分野をテーマに、他校の生徒と城西地区の社寺や町並みを巡るなどして歴史や伝統産品を学習。その成果を、空き家を活用して飲食店や観光案内所、伝統産品の展示場が入る拠点を整備してPRするという提言にまとめて発表した。
講座は津山、津山東、津山工、津山商高が2017年度から毎年開催。複数高が一緒に共通の「地域学」を学ぶ県内でも画期的な取り組みだ。19年度には先進性が評価されて経済産業省、文部科学省主催のキャリア教育推進連携表彰で奨励賞に選ばれた。
本年度は計5日間の講座に34人が参加した。市の政策などについて講義を受けた後、観光のほか医療・福祉、教育・人材育成、産業の4分野でフィールドワークをした。
医療・福祉分野の生徒は市独自の介護予防運動「こけないからだ体操」を高齢者と体験し、運動の効果などをインタビュー。教育・人材育成分野は岡山大教育学部の教授から県北の教育事業を聞き、産業分野は市内の企業を訪ねた。
8月の成果発表会では、生徒たちが学習内容を提言として披露した。「高齢者が小中高生ら異世代と関わり、健康を維持できるような交流組織をつくる」(医療・福祉)、「企業と地域、高校生が交流する場を設ける」(産業)、「若者が歴史を学ぶ機会を増やす」(教育・人材育成)—などと高校生目線で練り上げ、学校関係者をはじめ行政や企業担当者にオンライン配信した。
指導に当たった美作大の武田英樹准教授=社会福祉政策=は「他校の生徒や地域住民と関わり、関心や疑問を深めることで、社会を担うプレーヤーとして地域の課題を“わが事”と捉えられるようになった」と生徒の成長を評価する。
生徒たちの提言は、地域づくりに生かしてもらおうと行政にも届けられている。
2年目の18年度から続き、過去には「『スイーツまつり』や『肉まつり』を開いて第6次産業を促進し、継続的にPRする」「医療・福祉専門学校の設立」などを要望。昨年は「つやま広域企業ガイド」の表紙に生徒の意見が取り入れられ、若者に親しみやすいデザインに一新された。
「講座を通じ地域づくりの大変さを知ったが、それだけに強く関わりたいと考えるようになった。まずはみんなで考えた提言が市民生活を良くすることにつながればうれしい」
教育・人材育成分野の提言をとりまとめ、28日に各分野の代表と津山市長に提出する津山高2年前美里さん(16)は期待を寄せる。