“みまさか”ではたらく人物図鑑

2022
松本 里梨さん

学校法人 美作学園 生活科学部社会福祉学科 4年生

松本 里梨 さん

2000年津山市生まれ。津山東中学校、岡山県美作高校を経て、19年美作大学生活科学部社会福祉学科に入学。23年4月、津山市社会福祉協議会に就職予定。

地域に“つながり”生む社会福祉士に

津山市で50年以上の歴史を持ち、「食」「子ども」「福祉」の3分野で活躍する人材を輩出している美作大学(津山市北園町)。同大の社会福祉学科で学ぶ松本里梨さんは、来春に津山市社会福祉協議会に就職が内定し、現在は社会福祉士の国家試験合格に向けて猛勉強中の4年生だ。元々は保育士志望だったが、高校3年時に同大の教員から、児童、高齢者、障害者ら困っている多くの人たちの相談・支援を行う社会福祉士の話を聞き、「保育だけでなく幅広い分野で人の役に立ちたい」と進路を変更。入学後は現場経験豊富な教員の指導で、社会福祉士に必要な知識と面接技術を身に付け、幅広い世代で対話をする「だっぴサークル」で活動し、コミュニケーション力を磨いてきた。「育ててくれた津山のために貢献したい。障害者、高齢者、子どもたちみんながつながりを持てる社会が目標」と希望に燃えている。

津山市の郊外、両親、祖母の3世代家族に生まれた松本さん。毎朝通学する道すがら、出会うお年寄りや近くの障害者施設に通う利用者などだれにでも笑顔であいさつをする彼女は、家族や地域との温かいつながりを身近に感じながら育ってきた。そんな松本さんが目指しているのは社会福祉士。高齢者や障害者、児童など日常生活を営むのが難しい人の相談に応じ、金銭面、法律面で適切な制度やサービスを活用できるよう援助する仕事だ。
「津山にこれほど問題を抱えている人がいるとは知らなかった」。4年次の長期実習で訪れた津山市の地域包括センターで松本さんは福祉の現場を目の当たりにし、大きな衝撃を受けた。同センターでは介護保険の申請や高齢者のさまざまな相談を受けるため、社会福祉士らが毎日数軒の家を訪問している。それに同行した松本さんが目にしたのは「いわゆる“ごみ屋敷”だったり、当事者の問題だけでなく、実は引きこもりや障害を持つ子どもがいたり」といった思いもよらぬ実状だった。一軒一軒状況が異なり、問題が複雑に絡み合っていても社会福祉士は相談者の話にじっくりと耳を傾け、本当に困っていること「主訴」をくみ取り、解決に導いていく。その姿に憧れを抱くとともに、「外から見ただけでは家庭の問題はわからない。どんどん人や地域に関わっていかなければ」と社会福祉士の意義を改めて実感した。

社会福祉士が最も必要とされる主訴を聞き取る力を養うため、美作大では「相談援助(ソーシャルワーク)」の演習に力を入れており、松本さんも2年次から教員や仲間とロールプレイ方式で面接の演習を行ってきた。「始めた当初は会話ができてもなかなか『主訴』を引き出せず、落ち込んだ」という松本さんだが、現場経験豊富な教員の面接方法を参考にするなど努力を重ねるうちに「質問する前に、まずは本人の気持ちに寄り添う事が大切」だと気づいたという。また社会人らと対話する「だっぴサークル」に所属し、幅広い世代とコミュニケーションしたことも面接力の向上に役立ったと振り返る。

現在は来年2月の社会福祉士の国家試験の準備で多忙な毎日を送る松本さん。合格率30%に満たない難関資格だが、美作大学は2021年の現役合格率75%(20年は92%)。少人数制の対策講座や合宿などの手厚いサポートがあり、安心して試験に備えられている。「社会福祉士になったら個人の相談はもちろん、人と人、地域をつなぐ役割も果たしたい。私が両親や地域の温かい“つながり”の中で育ててもらったように、今度は私が地域に貢献したい」と目を輝かせている。

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