“みまさか”ではたらく人物図鑑

2022
森岩 希さん

菅田株式会社 本店 販売スタッフ

森岩 希 さん

1995年美作市生まれ。岡山県立津山工業高校を経て、2018年京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)芸術学部空間演出デザイン学科を卒業。同年菅田入社。

接客通し地域との“絆”育む

「お久しぶりです。お元気でしたか」。来店客に目を配り、優しく声を掛けているのは宝飾品店「KANDA本店」(津山市川崎)の森岩希さん。「好きなジュエリーと接客の仕事がしたい」と京都の大学を卒業後Uターンし、全国に約100店舗を展開する「ジュエリーカンダ」を経営する「菅田」(同)に入社した販売スタッフだ。「話すのがあまり得意ではなくて」とはにかむが、「一度来店されたお客さまはほぼ覚えている」と同僚が舌を巻く記憶力と、顧客一人一人に手紙で感謝を伝える誠実な接客が彼女の持ち味。「人と人との距離が近く、都会にはない温かい交流があるのが魅力。『持って帰りんちゃい』と自宅でできた果物を届けてくださる方もいるんですよ」と地元客との絆を大切にしながら、ジュエリーの魅力を伝えている。

旧因幡街道の宿場町、美作市古町で生まれ育った。絵やイラストが好きだったことから津山工業高校のデザイン科に進み、京都造形芸術大学(現京都芸術大学)では、好きなジュエリーや小物のデザインを学んだ。

就職活動では、大学時代の専攻を生かせ、アルバイトで楽しさを知った接客の仕事を幅広く検討。目に留まったのが地元の津山市に本社を置く「ジュエリーカンダ」だった。全国規模の企業であること、何より「販売は物と金との交換ではなく、人と人との交渉であり、心と心のふれあいである」という社長の言葉が森岩さんの心をとらえた。

希望通り販売スタッフになり、入社2カ月で本店の勤務に抜擢された。ジュエリーカンダの旗艦店である本店は、オリジナルから高級ブランドまで数多くの商品が並ぶ重厚な雰囲気。配属当初は緊張のあまり「お客さまに声をかけられない」日々が続いたという。悩んだ末に森岩さんが出した答えは“自分らしい接客”。「お客さまの話をしっかり聞く」ことに徹し、「手紙なら思いを伝えられる」と顧客一人一人に手書きで御礼をしたためた。メールや無料通信アプリLINE(ライン)が主流の時代に、相手のイメージに合わせた便せんを選び、一文字一文字思いを込めた手紙は徐々に顧客の心をつかんでいく。「手紙をありがとう」という御礼の電話がかかり、「森岩さんいる?」と指名で訪れる客も増えていった。

記念日やギフト、自分へのご褒美など女性のライフスタイルを彩る数多くのジュエリーが並ぶ店内で、ブライダルコーナーは森岩さんのセンスと心遣いが光る場所だ。「ブライダルは一生もの。気持ちよく納得して買ってもらいたい」と、商品の紹介よりもまず「お客さまを理解」するため、2人の出会いやストーリー、好みなどについてじっくりと耳を傾ける。「『いろんな店を回ったけれど、(接客が)あなただっただからここで買うわ』と言われたときが一番うれしかった」とほほ笑む森岩さん。またサプライズでプロポーズしようと一人で婚約指輪を求めに訪れた男性客には、プロポーズの場所やタイミングをアドバイス。「おかげで結婚が決まりました」とカップルで結婚指輪を探しに訪れてくるときにも接客の醍醐味(だいごみ)を感じるという。

「人と人、心と心」の接客で、20~70代の幅広い世代のファンを増やしている森岩さん。「“ジュエリーを買う、直すならカンダ”と地域で信頼されていることを肌で感じる。この伝統を守るため、今後は若い人にもっとジュエリーの魅力を伝えていきたい」と静かに目標を語ってくれた。

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