“みまさか”ではたらく人物図鑑
“繊維のチカラ“で明日を変える
「BSファインには人を“冷え”から守るだけでなく、世の中のさまざまな課題を解決できる可能性があるんです」と、就職活動中の学生に熱心に語り掛ける加茂繊維(津山市野介代)の田上沙綾さん。今年10月に入社1年目で採用担当に抜擢され、会社説明会や面接で、学生一人一人に笑顔で丁寧に対応している。同社は遠赤外線を放出する独自繊維“着る岩盤浴”「BSファイン」を開発し、蓄熱性の高いインナーウエアの製造・販売で急成長している企業。近年は寝具や産業資材などの分野への応用も目指している。田上さんは学生らに、BSファインの可能性や、「社会の課題を“繊維のチカラ”で解決する」という企業のミッションを伝え、共に働く若い仲間づくりに奮闘している。
1973年の創業以来、肌着を主としたものづくりに取り組んできた加茂繊維。同社が理想の肌着を追求し、2004年に開発したのが独自繊維“着る岩盤浴”BSファインだ。岩盤浴に用いられる天然鉱石・ブラックシリカをナノ化し、ポリエステルに練り込んだ新素材「BSファイン」は、遠赤外線で体を温めてその体温を蓄熱して一定に保ち、1年中着用できるのが特徴。現在、BSファインを使ったレッグウオーマーは137万枚以上を売り上げるほか、ウエストウオーマー(腹巻き)、インナーウエアなど約300種類のアイテムを展開している。
京都府出身で、高知大学に進み化学を専攻していた田上さん。興味のあった繊維業界を中心に就活する中、インターンシップで訪れた加茂繊維で、社長から会社の理念を聞き感動。「人を助け、喜ばれる仕事がしたい」という自らの思いと一致し、入社を決めた。
入社後配属されたのは、テレビやラジオCMで商品を知ったお客さまの注文や問い合わせに応対するコールセンター。「元々電話が苦手。当初はうまく商品の説明ができなかった」というが、「お客さまの困りごとをよく聞く」努力をし、より適した生地や効能の商品を紹介して喜ばれるまでに成長。数カ月後には1日42件の目標受注件数を達成した。
「『冷えが解消した』『トイレに行く回数が減った』といった声を聞くと嬉しくて、やりがいにつながった」という田上さん。その一方で、「冷えの悩みを抱える人の多さ」を改めて実感したという。
現在は採用担当として、会社説明会の準備や学生の対応を一人で行っている。新たな仕事に戸惑うことも多いが、社内で実践されている、従業員同士で感謝の気持ちを伝え合う「サンクスカード」が心の支えだ。「いつも笑顔がいいね」「残業してくれてありがとう」といった同僚や上司からのメッセージに励まされ、頑張れるという田上さん。「社内の良好なコミュニケーションは当社の大きな特長」と言い、学生にも必ず伝えているという。
さまざまな仕事を通して成長を続ける田上さんは、「いずれは素材開発の研究に携わりたい」という目標が明確になってきたという。「お客さまの声を聞いて、繊維のチカラで悩みを解決したいという気持ちが一層強くなった。“冷え”だけでなくさまざまな機能を持った繊維をつくってみたい」と目を輝かせる。