“みまさか”ではたらく人物図鑑
株式会社英田エンジニアリング 技術部 機械設計
前田 敦史 さん
1998年真庭市生まれ。岡山県立勝山高校を経て2020年近畿大学工学部ロボティクス学科を卒業。同年英田エンジニアリング入社。環境機器製造部を経て、22年から現部署に勤務。
顧客ニーズに応える機械設計に奮闘
車のブレーキの踏み間違いを防ぐ「アイアクセル」や自動車盗難防止装置「アイシャロック」など「ちょっと進んだものづくり」を続ける英田エンジニアリング。独創的な製品を生み出す同社を支えるのは創業以来培ってきた金属の精密加工や熱処理の卓越した技術だ。その粋を集めて作られているのが基幹製品である成形機。航空機や自動車、建築部材などの資材をロール成形するシステムは、独自のアイデアで省力化・自動化を実現し、高速で高品質な製品が生産できると国内外で高く評価されている。この成形機の設計に携わるのが入社4年目の前田敦史さん。顧客の要望に合わせて一台ずつ製作するため、設計が複雑で悪戦苦闘していると苦笑するが、それでも「好きなものづくりで地元に貢献したい」と、持ち前の粘り強さを発揮して、日々の仕事に取り組んでいる。
出雲街道の宿場町として栄え、現在も白壁の土蔵、格子窓の商家といった古い町並みが残る真庭市勝山で生まれ育った。高校まで地元で暮らし、大学は興味のあった“ものづくり“を学ぶため、広島にキャンパスがある近畿大学に進んだ。就活では広島県内の大手企業の内定を得たものの、次第に「岡山県北で就職して地元に貢献したい」という思いが強まり、県北の機械系企業に絞って再検討。その中で目に留まったのが、地面とフラットになる駐車場機器「ゼロフラップ」を開発して話題を呼んでいた英田エンジニアリングだった。独創的なものづくりに興味を引かれ、同社のインターンシップに参加すると、従業員同士が「ご安全に!」と声を掛け合う様子に好感を抱く。和やかで活気のある雰囲気の中で「看板商品の設計をしてみたい」と入社を決めた。
入社後は産業廃棄物の破砕機の刃などを独自の熱処理技術で作り出す環境機器製造部の現場に配属された。高性能な設備で鋼材の焼き入れや焼き戻しを行い、長寿命の製品を作り出す製法は、同社が誇る技術の一つ。初めてものづくりの現場に飛び込んだ前田さんは、戸惑いながらも粘り強く努力を重ね、半年で金属熱処理の技能をマスターした。
昨年4月に念願の機械設計の部署に異動すると、鋼板を航空機、自動車、建築部材などさまざまな形に成形できる成形機の設計チームに加わった。同社の製品はロール成形から制御システムを含むフォーミングラインまで一貫して行い、さらに毎回顧客の要望に合わせて設計をアレンジするオーダーメードが特長だ。1つの成形機は100種類ほどのユニットで構成されており、前田さんは毎回1ユニットずつ担当して学びながら設計する日々。「3年かければ1つの成形機ができるようになる。複雑で高度なこの設計ができるようになれば、どんな機械の設計もこなせるはず」とコツコツと努力を続けている。
忙しい毎日を送りながらも、就業後や休日は自然豊かな環境でしっかりとリフレッシュ。同期入社の6人とはプライベートでも仲が良く、食事に行ったり、フットサルチームをつくって活動したりして楽しんでいる。「今はまだ修行中の身ですが、いずれは自分が顧客のニーズを聞き取り、満足してもらえる機械を作れるようになりたい」と目標を掲げる前田さん。ものづくりを通して岡山県北を盛り上げたいという夢に向かって一歩ずつ歩みを進めている。