地域に生きる“みまさか”の若手たち
岸本 省吾さん =久米南町
地域に生きる“みまさか”の若手たち
岸本 省吾さん
=久米南町
まず自分たちが楽しめることから始めよう
「キャーッ」「ウォー」。久米南町役場(下弓削)に隣接する町中央公民館大ホール。暗幕が張り巡らされた薄暗い部屋に、子どもたちの絶叫がこだまする。
夏の恒例行事となった「カッピーおばけ屋敷」。段ボールなどで手作りした本物そっくりの墓石や卒塔婆が立ち並ぶ“小道”を女の子は肩を寄せ合い恐る恐る歩き、男の子は背後から現れたおばけに体を硬直させる…。
町ゆかりの20~30代でつくる「久米南町新生隊」が主催し、昨夏で5回目。
久米南町で生まれ育ち、兄が県外就職したこともあり、家業の建築業を継ぐことを意識して、進路は福山大建築学科を選んだ。「父はそんなに喜ぶでもなく、『そうか』と言っただけでしたが…」と苦笑する。
卒業後、業界のノウハウを学ぶため、三原市の建設会社に就職した。現場監督として多忙な日々を送っていた2011年、一本の電話が入った。「そろそろ体力的に仕事がきつくなってきた」。初めて耳にした父の弱音とも思える言葉に、実家へ戻ることを決めた。
7年ぶりに帰った久米南町。中学時代に六十数人いた同級生の半数以上が就職や結婚で転出していた。一抹の寂しさを感じながらも家業に専念。「仕方ないよな。田舎だから」。いつしか自分に言い聞かせていた。
そうした日々を過ごすうち、町内で活動する地域おこし協力隊員と出会った。廣瀬祐治さん(34)と真鍋圭輔さん(34)。地域資源の発掘や開発、まちづくり団体の支援…。都市部から移り住み、久米南町の活性化に取り組む姿がまぶしかった。「自分にも何かできないか。この町をより良くしたい」。自然とそう思えるようになった。
「まず自分たちが楽しめることから始めよう」―。廣瀬さんらの呼び掛けに呼応し、14年4月に新生隊を結成。代表を任され、独身男女に出会いの場を提供する恋活イベント、酒と料理を楽しむ一日限りの「山村バー」、小学生を集めての昔遊び…と多彩な催しを企画。11人だった仲間は23人へと倍増した。
少子高齢化と都市部への流出で人口減に歯止めがかからない中山間地域。「自分は町の活気が失われていくのを、手をこまねいて見ているだけだった。でも、それじゃダメだと分かったんです」
都市と町をつなぎ農業を軸とした仕事づくりに取り組むNPO法人「らんたん」、久米郡商工会久米南支部「有志の会」にも名を連ね、学校のブランコや一輪車の補修、植え込みのせん定といった作業にもボランティアで汗を流す。
「自分は一人じゃない。みんなの力を合わせれば、活性化への道は開けると信じています」