地域に生きる“みまさか”の若手たち
松尾 敏正さん =真庭市鍋屋
地域に生きる“みまさか”の若手たち
松尾 敏正さん
=真庭市鍋屋
若者の背中押す存在に
「仕事を尋ねられると説明しづらく『カフェの店主です』って答えています。これが一番納得してもらえる」と笑う。
カフェとは、2016年に勝山町並み保存地区にオープンさせた「ろまん亭」。地元食材を使ったランチをSNS(会員制交流サイト)で発信し、昼間しか営業していないにもかかわらず黒字経営を続けている。
松尾さんは14年に市の地域おこし協力隊に就任。大阪から妻と3人の子どもを連れて移住した。
20代後半で、東京や関西でレストランなど40の飲食店を展開する会社の運営管理部長に就任。関連会社の社長も務め3店舗を経営した。東京・丸の内やJR大阪駅前の再開発にも携わった。
仕事は多忙を極めた。自宅に帰れない日も珍しくなかった。「30代のうちにライフスタイルを見直し、家族との時間を増やしたい」。一番上の子が小学校に上がるのを機に移住することを決めた。
脳裏にあったのは、幼いころに野山を駆け巡った真庭の地。勝山地域の月田地区で生まれ、7歳まで過ごした。
「大阪では遊び場が公園などに限られていた。人同士の距離も近い真庭にずっと良いイメージを持っていた」と振り返る。
「起業やまちづくりを志す移住者や住民が各地にいる。線や面でつなげればもっと活気が生まれるはず」
次第に可能性が見え始め、次々と活性化への戦略を打ち出した。
16年9月、市が開設した交流定住センターの運営母体となる一般社団法人「コミュニティデザイン」を設立。移住希望者や地域おこし協力隊員の相談などに当たっている。
市内外の商店や生産者団体が自慢の逸品を販売する「やまびこマーケット」を市内各地で16年から年1回以上開催している。
今年4月には、廃校した旧上田小にゲストハウスや美容室を整備して滞在型交流施設にリノベーション(改修)し、地元の若者と運営に乗りだした。
廃校後の校舎の利活用は多くの中山間地域に共通する課題。「成功すれば全国のモデルになり得る。長い目で取り組みたい」
地元の高校生や大学生、地域おこし協力隊員、若手起業家らを招いた情報交換会をろまん亭で月1回開き、古里を担う次世代の支援にも力を入れている。
「起業するにしても、地域貢献するにしても、何かを始めるのに孤独や不安はつきもの。そんな時に背中を押してあげられる存在になりたいですね」